今話題の漫画を読んでその感想をレビューする連載企画の第7弾。今回の作品は、大今 良時先生の新作『不滅のあなたへ』です。
本作は地上に現われた“球”が様々な経験を経て自我を形成していくという、一風変わったファンタジー漫画。大きな刺激をきっかけとしてどんな生物の姿にも変化できる謎の“球”があらゆる情報を取り込むことで成長していく姿を描いています。
今回は僕が本作『不滅のあなたへ』を読んだ後の感想・評価をレビューすると共に、本作の概要やあらすじ、見どころも簡単に解説していきます!
『不滅のあなたへ』とは?
少年マガジンにて好評連載中!大今良時先生の待望の新作!
本作『不滅のあなたへ』は、「週刊少年マガジン(講談社)」にて2016年11月より連載中の漫画。コミックスは既刊5巻で、最新の第6巻は2月16日に発売されます。
作者は、アニメ映画も大ヒットとなった『聲の形』を代表作に持つ女性漫画家の大今良時(おおいま よしとき)先生。
彼女の連載作品は、ラノベ・アニメ業界のみならず活躍する作家冲方丁(うぶかた とう)先生のSF小説『マルドゥック・スクランブル』の漫画化で作画を担当したことを含めても、今回の『不滅のあなたへ』で3本目だというのですから、その完成度の高さには驚きです。
物語のあらすじ
何者かによって“球”がこの地上に投げ入れられた。その球体は、情報を収集するために機能し、姿をあらゆるものに変化させられる。死さえも超越するその謎の存在はある日、少年と出会い、そして別れる。光、匂い、音、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……刺激に満ちたこの世界を彷徨う永遠の旅が始まった。これは自分を獲得していく物語。
出典:eBookJapan
本作のあらすじを説明するのは結構難しいのですが、僕なりに簡単なストーリーを紹介します。
まず、主人公は不死身の球体。後に一人の少女からその「フシ(不死)」という名前を付けられますが、それまでは全く名前もない存在でした。フシは生物から大きな刺激を受けたときに、その生物の姿を獲得して変身することができるようになる性質を持っています。この大きな刺激とは、主にその生物の死の瞬間であることが多いようです。その性質をもとに、フシはさまざまな生物と出会い、生物たちの姿や感情を得て、自分という存在を確立していこうとする物語です。
ちなみに、フシがはじめて生物の姿を得たのは一匹の狼・ジョアン。そして、その狼と共にたった2人で暮らしていた少年が、第1巻の表紙に描かれている白髪の少年です。
内容がざっくりわかるPR動画
自分で書いていても非常に説明が難しかったので、上の動画も併せてご覧いただくと理解が深まるかと思います。
『不滅のあなたへ』の見どころ
死をも超越したフシの永遠の旅
フシはたとえ死んでしまったとしても、一定の時間が経つと再生できる力を持っています。一人で歩き始めてから既に何度も死を経験するのですが、当初のフシ本人には「死ぬ」という概念がないため、そんなことはお構いなし。ただ、世界の情報を集めることだけを本能的に求め、世界を旅していきます。
そしてそのストーリー展開が、これまでどの作品にもない独特な雰囲気を演出しているように感じます。ざっくり言えば、フシは色んな人や物に触れて成長していくわけですが、単純な「主人公の成長物語」でもないわけです。
“フシ”こと球体をこの世界に放った語り手の正体とは何なのか?そして、フシがこの世界で為すべきことは…?そんな謎の真相に迫っていくのも見どころです。
フシが出会う個性豊かな人間たち
フシが旅の中で出会う個性的なキャラクターたちも本作の見どころの一つ。最初に出会った人間は、狼とたった2人で暮らす少年。その次は、村の掟で山の神(オニグマ)の生贄に選ばれてしまった幼い少女。そして、想いを寄せていた少女を身を投げ出して守った結果、その事故の影響で醜い顔になってしまった少年。
彼らと出会い、共に過ごすことでフシは様々な感情を獲得していきます。どのエピソードも胸に詰まるものがあり、感動的なシーンばかり。設定は斬新ですが、基本の見どころ自体は王道中の王道です。
『不滅のあなたへ』の総評
総合評価:★★★★★
『不滅のあなたへ』は、ありきたりなストーリーの漫画に飽きてしまった方におすすめの本格派ファンタジー漫画でした。個人的な評価は文句なしの最高評価「5」です!